今後の日本における肥料産業の展開

近年、肥料の価格が高騰していることは農家にとって周知の事実であろう。これは世界的なトレンドでもあり、さらに日本においては、日本経済の停滞による円安、新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーンの混乱により、輸入品に依存している肥料の高騰化は世界平均より大きいといえる。

<米国の肥料価格動向> 出典:肥料価格の急騰継続を業界大手2社が予想-食品インフレ悪化の恐れも - Bloomberg

f:id:domybest515:20220316224459p:plain

肥料の主要成分のトップ生産国には、中国、ロシア、カナダ、モロッコベラルーシなどがあげられるが、ロシアのウクライナ進行による、ロシアへの経済制裁が返って肥料高騰に影響することがささやかれている。

 それを受けて米国農務省(USDA)は、アメリカにおいて革新的な肥料製造に向けて、2億5000万ドル(約300億円)の投資計画を発表している。現在、肥料鉱物の供給の制限、エネルギーコストの上昇、世界的な肥料需要の高騰、肥料輸入への依存、肥料競合の欠如など多くの要因により、アメリカでは昨年から肥料価格は2倍になっている。

USDAはこのサポートを受ける方針を下記のように挙げており、米国内における肥料産業の発展を鼓舞している。

  • 独立性:主要な肥料供給メーカーでないこと(価格競争の活性化)
  • アメリカ産であること:国内の高給の雇用創出と海外供給依存の低減
  • 革新的技術:次世代肥料の開拓、生産
  • 持続可能:再生可能エネルギー使用、温室ガスの影響を低減
  • 農家重視:米国農業物生産者に支援と機会を提供

参考サイト:https://news.agropages.com/News/NewsDetail---42187.htm

 

一方、日本に焦点を移して、農林水産省のページを見てみると、作物の品質や収量を維持しつつ、肥料のコスト低減を図る方法を整理する事例集の作成、また、令和3年度補正予算において、農家が活用できる「肥料コスト低減体系緊急転換事業(予算額:45億円、補助率:土壌診断経費は定額、肥料コスト・施肥量の低減技術の導入経費は2分の1以内)」を措置などの記述がある。

 

農林水産省ホームページより

<肥料のコスト低減を図る方法>

  • 配送費を減らしてみませんか
  • 安価な肥料銘柄に替えてみませんか
  • 肥料の購入先を見直してみませんか
  • 土づくりに力を入れてみませんか
  • 土壌診断や土壌管理アプリを使用してみませんか
  • いろいろな施肥量の低減技術を導入してみませんか

引用サイト:https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/210528.html

 

 米国の方策としては、産業の活性化であり、日本の方策としてはコストカットによる対応であることが一目瞭然である。これはやはり、日本の肥料市場は農家減少に伴い減少しているのに対し、世界の肥料市場は成長しているという状況に他ならないと考える(2021年初頭の予測でCAGRは約4%)。

<日本の肥料市場の推移>

f:id:domybest515:20220316224551p:plain

出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2383

 

 ここからは、筆者の独断と偏見であるが、日本においては肥料資源がないため、やはり肥料生産することは難しいと考える。一方で世界と比較した際、日本におけるメリットとしては、海が多いため、海藻が多く取れることに注目したい。つまりは海藻を肥料に活用できないかと考える。海水には肥料に必要なリン塩、カリウム塩、窒素などが含まれているため、当然として海藻には上記のものが含まれている。技術的にはだ改良が必要かと思われるが、こういった取り組みが今後日本では必要でないかと考える。現状、海藻を肥料として活用する技術は全くないわけではなく、下記リンク先のようにバイオスティミュラント(BS)として活用が知られてきているのが現状である。

参考サイト:https://ecologia.100nen-kankyo.jp/column/single150.html

バイオスティミュラント(BS):正確には肥料の位置づけではなく、植物が本来持っている能力を最大限に発揮できるようにする資材であり、医薬でいうところの漢方、栄養ドリンクなど感覚を持っていただけると幸いである。現状、日本において正確な切り分けはできていないが、欧米州などにおいては、地球温暖化に備えて展開が広がっている分野である。有名なものであればBASFのAgCelenceⓇなど、収量増加の宣伝がなされている。

参考サイト:https://www.basf.com/jp/ja/who-we-are/microsites/agcelence.html

 

 直近における日本の特許を調べてみると、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構より、海藻と農薬の混合による作物収量の増加実施報告が報告されているのがわかる。

(特開2022-007998:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2022-007998/30E270A25471D188BCDA9DC033B74B3354760AF6347258BF4A310807E662F5AF/11/ja)。今後の日本においては、こういった海藻などを用いたBS産業の活性化などが必要となるのではないかと考える。