ジャガイモに寄生する線虫(シストセンチュウ)の新規防除方法

 作物を生産にあたって線虫(センチュウ)という虫の存在をご存じであろうか?フィラリアというのはご存じかと思う、フィラリアは犬の肺動脈や心臓に寄生し、血液循環疎外を起こし、結果として、心臓につながる大きな血管を塞ぎ、血尿や貧血、呼吸困難などをともなう急性症状を起こし急死する症例などを発生させる寄生虫である。植物おいても同様に寄生し、植物を枯らすのがセンチュウであり、分類学上でいうと「線形動物門」に属する動物類の総称を示している。センチュウは細長い無色透明のミミズのような糸状の直径約0.03mm、体長は0.3〜1mmほどであり、肉眼での確認は難しい。

下記サイトがセンチュウに関してよくまとめられていたのでリンクを貼っておく。

引用サイト:https://ibj.iskweb.co.jp/feature/2021/11859/

(シストセンチュウの生態サイクルについても確認してください)

 

 今回、注目しているのは2週間ほど前に英語記事になっていたのは既に確認していたが、直近においても類似記事が上がっているのでこちらを紹介したいと思います。

参考サイト:https://news.agropages.com/News/NewsDetail---42198.htmWrap-and-plant technology to manage sustainably potato cyst nematodes in East Africa | Nature Sustainability

 

 ジャガイモに寄生するジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)は世界的な脅威であり、寄生された場合、根は損傷し、黄色がかった葉となり、生産されるジャガイモは小さくなり、しばしば病変で覆われるため販売することが出来ないといった状況となる。日本においては、北海道、青森、長崎などで発生が確認されている南米産の外来種となる。現在、アフリカにおいては特に問題となっており、センチュウが発生した土地において、同じ植物を育てることは非常に難しく、シストセンチュウは10年以上土壌中で生存することがすでに確認されています。

ジャガイモを他の作物と交互に植え、土壌に農薬を散布し、感染に抵抗するために育てられた品種を植えることによって、センチュウを防除することが方法としてありますが、発展途上国においてこの方法は農薬などの費用的な面、熱帯地域でるための品種適合性、低価値作物の植え付けの回転生産などから現実的でないと考えられています。現在、ケニアではシストセンチュウの範囲が拡大しており、ジャガイモ農家は、森林を伐採し、新しい畑を作っているのが現状と言えます。

 

 上記に示すような状況下において、新規防除方法が報告されています。その方法とは、ジャガイモの種(種イモ)をバナナより作られた紙(以下バナナペーパーと称する)に包み、植えるといった方法となります。これはバナナペーパーが若いジャガイモ植物の根から放出されるシストセンチュウが孵化する際検知する化学物質をバナナペーパーが吸収することにより、シストセンチュウの孵化が抑えられるといったメカニズムとなるそうです。また別の実験においては、孵化したシストセンチュウにおいてもバナナペーパーに包まれたジャガイモの根を見つけることが出来ず寄生できないことも判明しているとのことです。

 

 センチュウが発生しているケニアの畑において、バナナペーパーで包んだジャガイモを植えたところ、使わない場合と比較し収穫量は3倍となり、バナナペーパーに農薬をしみこませる場合では使用量が通常の散布と比較し、200分の1で収穫量はさらに50%増加するとのことです。現在、山芋やサツマイモなど他の作物においても良好な結果が得られている状況とのことです。ケニアや近隣諸国にはバナナ農園も存在しており、現在廃棄物として処理されている繊維をうまく活用することにより、地球環境にも優しく、農家も助かる方法として将来有望な方法であると考えられています。